The komori note小森ノート

TOP50第1戦優勝

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2016年TOP50シリーズが開幕した。その開幕戦の舞台は高知県の早明浦ダム。このフィールドで開幕戦を迎えるのは99、11、12、13年以来5度目となる。私の成績はルーキーイヤーの99年を除き平均15位程度ですべて予選は通過している。そのことだけみれば決して相性が悪いとはいえないフィールドだが、優勝争いに加わり切れていない悔しさもあった。湖自体はフレッシュでコンディションのいい魚が釣れるので好きな会場の一つでもある。
最下流のトーナメントスタート地点から最上流まで全長13km、今回のレギュレーションである60馬力制限のボートでは決して狭いと感じないダム湖である。私がこの大会で使用したボートは30馬力のサウザー395というボートで、その最上流までデッドスローエリアもあわせて40分はかかる。

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私のプリプラクティスではこういった移動時間を事細かに計算する。トーナメント中の時間配分はもちろん、遠いエリアで釣りをしていて帰着に間に合わなくなってしまっては元も子もない。そのプリプラクティス期間、3月中旬の早明浦ダムは水温8~9℃、連日のように北風が吹き抜ける寒い日が続いていた。トーナメントは2週間後、4月に入ってからということを考えて、その時は釣れないシャローを見て回った。早明浦ダムの水位、流入、放水量がリアルタイムでインターネットに公表されている。プリプラクティス期間中の水位は320m~323m、雨が降らなくてもダムは1日20cmずつ上昇していた。この計算だと2週間後のトーナメント初日までに2.8m増水することになる。いずれにしろ数mの増水はあり得る。魚探をかける代わりに陸の上の地形やストラクチャーを把握しとく必要があった。ノートを取りながら湖を7日間かけて一周した。その他に3年前の開催時と違うと感じたところは、バスのメインベイトがワカサギだったことだ。前回ワカサギはいなかったと思う。このワカサギに絡むパターンはあるな、と頭の隅に置いておいた。

直前プラ。これまでの経験ではプリスポーンのバスはルアーに対してセレクティブで、使うルアーや動かし方によって大きく釣果が分かれてしまうことが多いと感じている。この時期の亀山ダムのガイドでも、同じレッグワームのダウンショットをシェイクした場合とズル引いた場合とで釣果が0:15になったこともある。まずはその釣り方、今回はネイリグのボトムでのシェイク。これに気づけたことは大きかった。プラクティス初日は中、下流域の岬やワカサギの多いワンド内でプリスポーンの太ったキロオーバーが数本釣れ、後半は上流のカバーが釣れた。カバーもネイルリグで攻めた。晴れて水温が上がったことで午後は入れ食い状態になった。釣れたポイントは岬、ワンド、カバー問わず、見に行くと10~30近いスクールが見える。フィールのコンディションの良さを感じると当時に、魚は多い、人の後でも安心して釣れると感じた。

直前プラの二日目、低気圧の通過に伴い、冷たい雨が降ったことでプリスポーンのバスが微妙にポジションを変えた。少しレンジを落としたのだ。雨水の流入とダムの放水で起こるカレント、水温の低下、それから微妙に上下する水位に対してこの後バスがどう動き、どこで釣るタイミングを合わせるか、それが次のポイントだった。公表されているダムの水位表には夜から朝にかけて放水されることが示されていたので、私は水温の上がらない朝のうちは中下流域のミドルレンジをカットテール1.8gネイルリグで攻め、カレントが弱まり、水温の上がる午後は上流域のカバーをテキサスリグではなく、2.6g~3.5gのカバーネイルリグで攻めることに決めた。

タックルは今回少し独特なものをチョイスした。1.8gネイルリグはスピニングタックル、Fantasista STUDIOUS STANDUP FSNS-62ULS FSというオカッパリ用に開発したロッドを使用。これはネイルリグにソリットティップで細かいシェイクでアクションを加えつつ、その中にある微小なバイトをまずのせて、そのあと力強いフッキングを決める。ティップの柔らかさとバットパワー、そしてマス針でもジャンプや口切れによるフックアウトを最大限減らせるスローなテーパーが今回このロッドよチョイスした理由だ。リールはRevo STUDIOUS。ラインはG7 StrategicFinesse3+LB。超クリアウオーターの早明浦ダムなので3LBをチョイスしたいところだったが、昨年のトーナメントでのミスの多さに加え、今回はネイルリグに力強いフッキングを加えたかった。しかし3.5LBでは食わなくなってしまう可能性もあるし、扱いが変わってしまう。このようなときに開発した0.9号3+LBがさっそく武器となった。
カバーの方はFantasista FSNC-67MH MGS FRONTIER。ある程度のカバーロッドで行うベイトフィネス。ラインはG7トーナメントジーン12LB。FINAのFSSというフックを使用しているが、このフックはベイトフィネスロッドよりカバーロッドで力強くフッキングさせた方がいいと私は感じている。この2本がメインタックルだ。ワームはゲーリーにカットテールワーム。他にスモラバとこの湖では安定した釣果をもつDeepX200をセットしたロッドを要しした。
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初日は楽な展開だった。スタートは3番。さっそく最下流のワンドに入る。一時間ほどでリミットメイク。中流域の岬をランガンし入れ替えを2回。ここまですべてスピニングタックルのネイルリグ。午後になり水温の上がる時間に合わせ、予定通り上流のカバーで入れ替え。4500gを超えた。カバーは今回は落ち葉などが作るフローカバーをメインにしていた。流動的に発生するのでバッティングしにくいこともあるが、シャローに上がりたてのバスは下の空間が広く少し光の入るフローカバーを好む。直前プラの雨でかなりなくなってしまったが、細かいところに発生していた。これらが表れやすいところや条件もプリプラクティスで見つけておいた一つだ。初日は7位。優勝争いに加わるにはまずまずの順位だが、勝つためにはキッカーフィッシュが必要だと感じる。実際初日のトップウエイトを出した北大祐は2800gのキッカーを持ち込んでいる。春のリザーバーはこれがあるから怖い。
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2日目は下流域の釣りこそミスもあり苦戦したが、1本のみで移動した後半の上流は初日よりもよく釣れ、流し始めて1時間ほどで入れ替えまでいけた。晴れていて水温も高くなっていたからだ。こうなるとキッカーフィッシュを狙うしかない。季節の進行が遅い下流域のカバーを狙いに戻る。思いつくところをランガンしていき、終了20分前についに2㎏近いキッカーを手にすることができた。2日目は6165gのトップウエイト。予選をトータルウエイトのトップに立った。
予選を一位で通過するのは3度目。その全てをここまで優勝している。ここ一番では全くプレッシャーを感じないのが私の強みだ。
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最終日は朝一から上流へ走った。放水、流入とも量が減り、朝一でもカバーに魚が残っている可能性が高いと判断したからだ。また最終日は時間が短い。往復で1時間は潰れてしまう上流に先に行っておきたい。朝一こそバイトはなかったものの、しばらくして一か所のカバーで3本連続キャッチできた。しかしそこからノーバイト2時間。まだ撃ってないカバーもなくなってきた。数少ないポイントに入り直し、そしてようやく食ってきた待望のキロフィッシュがこの場面で痛恨のフックアウトしてしまう。一瞬冷静さを失った。自分も人の子だと思った。ここまで全く緊張などしていなかったが、ここで初めて緊張した。やはりすんなりとはいかない。それがこのカテゴリーで勝つということなのだ。連日のウエイトが5㎏を超えているルーキーの高梨プロを意識する。デビュー戦で優勝争い、末恐ろしいルーキーだ。彼は今緊張しているのだろうか? この湖が得意な市村プロも確実にウエイトを上げてきているだろう。こもままリミットメイクできず、そして入れ替えなしでは若さをも武器にした彼らに勝ちうることなどできないだろ。そんなことを考える。弱気の考えではなく、負けたくないと思っている自分を確認できたいい思考だった。陽射しもなく厳しい展開。落ち着くためにリグを作り直し、もう一度冷静に状況を分析する。水温はわずかだが上昇しつつある。エリアにバッティングする選手はいない。このままこのエリアで粘ることを決意する。そこから3連続、集中していないと見落としてしまいそうな50㎝×2四方程度のフローマットや流れてきたスタンプからバスがでてきた。一本を入れ替えて最終日は4955g。そのあとはキッカー狙いに走ったが、それ以上の入れ替えはできなかった。

意外ですね、と言われるが、実は今回の優勝は6年ぶりとなる。通算5勝目。A.O.Y.レースには参加しているが、ここ2年間は表彰台にも嫌われていたの本当にうれしかった。結果が伴わなければ何を言っても言い訳にしかならないのがトーナメントの世界。勝てたからというわけではないが、強さとなにか、改めてそれを私なりに意識することができた一試合だった。しかし大きな目標に向かってまだ第1戦が終わったばかり、このアドバンテージを生かすためにも次の試合に気合を入れて臨みたい。

最後になりましたが、今回のTOP50をお手伝いいただいたチャプター愛媛の皆さま、本当にありがとうございました。
このような素晴らしいフィールドでトーナメントを開催さててくださる地元の皆さま、
また私を応援してくださる全ての皆さまに心より感謝申し上げます。

小森嗣彦

2016/4/15