Today's Komori今日の小森嗣彦

テスト中のライン

ラインは同じフロロカーボンでもクオリティーによって強度に違いがあり、各メーカーや種類によってクセが違います。一概にいいラインとは何か?と言われると、自分が使っていて切れなければそれでいいのですが、フロロカーボンならば他のラインと比べて、伸びが少なく、巻き癖がつきにくく、根ズレに強く、ノットに強度があればいいラインだと評価されます。
私たちトーナメンターから付け加えるなら商品ムラの少ないラインというのもいいラインの条件になります。年間に何度も何度も巻きかえるため、製品の製造日の違いなどによって同じ太さでありながらムラがあったのでは、信じて使い続けることができません。これは比べてということができませんが、製法、製造元の工場のクオリティーというところでしょう。
今までトーナメントではバニッシュウルトラというラインを使い続けてきました。このラインの癖はよく知っています。どれだけ引っ張ったら切れるかも、どんなスピードで沈むかも、どうなったら巻きかえどきかも、言葉にしにくいですが、はっきりとした感覚で覚えています。とてもいいラインです。値段も安く、もし自分がライン契約のないいちアングラーだとしたら、間違いなくこのラインを買い続けていることでしょう。事実これで何度も優勝し、タイトルも獲っています。
ラインは釣り道具の中で最も信用度がいります。魚とつながる最も細い部分だからです。かけた魚を何もミスがないのにラインブレイクでバラすようなことはあってはならないのです。そう、昨年末のエリート5の2日目。ディープクランクの戦略で私はかかったらネットを使わずに抜くと決めていました。理由はロッドが8ft.でネットが短いため、やりとりの方がミスが起こりうることと、今まで何度も50UPを抜いてきたラインセレクトで自信があったからです。それが待望のビッグフィッシュを抜こうとした瞬間、突然ロッドティップ付近から切れてしまった。ラインを掴もうと走ったが間に合わず、ゲームが終わったしまった。その理由も散々考え、後日ペットボトルをぶら下げたりして検証もしました。結局検証では一度も切れませんでした。そして行き着いた結論は溶岩にあたってラインが弱っていから切れたでした。これは不慮のアクシデントです。これによりバニッシュウルトラ10LBと自分との信頼関係が崩れることはありませんでした。そしてこのラインブレイクは予測可能であり、回避できたミスとも考えています。しかし溶岩のスレにもっと強いラインがあれば、あの魚はボートの中に入っていたはずです。私にとって、アングラーとしてミスをなくす方向と、強いラインをチョイスするという二つの進歩の可能性を知ることができた出来事でした。
もちろんどんなラインであってもあの時は切れていたかもしれません。しかしよりクオリティーの高いラインがあれば、他のケースでもさらに有利に戦えるのではないか、当然そういう考えが浮かんできました。そしてその答えがメーカーからようやく帰ってきつつあります。それが今テスト中のラインです。
ラインのテストは妥協を許しません。そりゃそうです。最低限の条件はすでV3をつなぎとめたバニッシュウルトラですし、そこを明らかに超えなければ新製品を作る必要はありません。何を何%アップしようが、高性能な材質を使おうが、ダメなものはダメなのです。何十回も何百回もノットを作り、手で切って、キャストをしたり、わざとストラクチャーを絡ませてみたり、フィールドで実際に起こりうるラインブレイクの実例に当てはめて、何度も強度を確認しました。このNEWラインなら次はあの魚をウエイインできると思います。

2013/3/3